まだ、本気で闘っている訳ではなかった。

 どちらも。

 相手の能力を見定めながら、爪を繰り出しているに過ぎない。

 技量は同じ。

 スピードは、僕の方が勝つが、パワーは、圧倒的に、牙王が有利だ。

 がきんっ!

 牙王の繰り出す爪を、試しに真正面から受けてみる。

 重い。

 受け止めきれない。

 僕は、そのまま壁に向かって、吹き飛ばされた。

 ………。

 僕は、壁に叩きつけられる直前、くるりと一回転する。

 そして。

 その壁を蹴ると、牙王に向かって跳躍した。



 ひゅおっ!

 キィィィィン!



 喉を狙った僕の爪は、あと少しの所で、弾かれた。

「……軽いな」

 爪を舐めながら、牙王が嘲笑う。

「うるさい!」

 僕が改めて爪を構えると、牙王の表情が少しだけ、真剣な顔になった。