「これは、これは、皇子サマとその御一行じゃあねぇか!
 今夜の騒ぎの元凶が来やがったな。
 ヨく見ればすべての始まりを作った男も、ちゃっかりお供になってやがる。

 呼びもしねえのに、こんな所にまで押しかけて来やがって!
 さっきの続きが、して欲しいのか?」

「牙王!」

「その口から、オレの名前なんざ出てくるとは、思わなかったな。
 嬉しいぜ?
 愛しい、オレの皇子サマ。
 そうそう。
 オレの右目はもう使いモノにならんとさ」

 牙王は、下品に嘲笑すると、ぎらりと睨んだ。

「この礼に、キサマが今まで、味わった事のない屈辱と、痛みと恐怖をやる。
 覚悟しておけ!」

「そんなことは、私がさせない!」

 爪を構えた残月が、叫んだその途端。

 まるで、計ったかのように、天井が震えたかと思うと、土山の化け物が、ぼたぼたと落ちて来た。

 天井の一部が更に崩れた。

 そして。

 床が、あっという間に、土山の化け物達で埋め尽くされる。

「……!」

 その光景に、凛花と穣が、息を呑んで身を竦ませた。