Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】

「でも!」

 凛花は叫ぶ。

 無理もない。

 東星学園は、凛花の学び舎だった。

 ここが本当はどんな所であったとしても。

 自分が暮らす場所に思いを寄せたり、固執してしまう感覚は、僕にもわかる。

 それは、吸血鬼でも、人でも同じ事だと、僕は思う。

「本当に……何とかならないのか……?」

 下を見れば、土山の化け物と、人とが入り乱れている。

「これをそのまま、全て吹き飛ばすつもりなのか?」

 この中には凛花の兄もいるはずだった。

 ……生きていれば。

 残月の仕掛けたもので、凛花の兄を殺めるわけにはいかなかった。

「お前の言うとおり、その施設が地下にあるのなら。
……今ここで表面だけをなぎ払っても意味が無いだろう?
 また別のところから出入り口を……輪を作って出入りしてしまうだけた」


「では、どうしたら……?
 陽が昇ってしまったら、人間の活動が活発になってしまって、騒ぎがますますひどくなりますよ?」

「出入り口の輪を見つけて乗り込もう。
 そして、直接叩く」

 そうすれば、地上に被害は出ない。

「確かに、それができれば、一番いいでしょう。
 しかし、どうやって?
 私も、探しましたが……見つかりませんでしたよ?」

 残月の言葉に、僕は、微笑んだ。

「凛花に、協力してもらう」