Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】

「もし護る、って言うのが『僕』ならば、気にしないでいい。
 現代に合戦や戦争はない。
 僕はまた、人にまぎれて普通に暮らすんだよ?
 この騒ぎさえ、収まったら」

「ですが……!」

「一介のサラリーマンに、人に護ってもらわなければいけないほどの危険は無い。
 それに、もっとヤバい時代でも一人で何とか切り抜けてきたんだ」

 まだ、何か言いたそうな残月に、僕は、微笑んだ。

「凛花と二人で幸せに暮らしてくれ。
 そして、どうしても僕の世話を焼きたい、って言うなら、百年後……凛花が老衰で死んじゃってからでいい。
 僕には……僕達には『時間』だけはあるんだ。
 他には、何も無くったって、ね」

「……皇子……」

 残月は、そっと目を伏せた。

「……判りました。
 それが、皇子の希望でしたら……」

 残月は、言って、そして、真剣な顔をして僕を見た。

「それでは、皇子。
 ここは、危険です。
 凛花を連れて出てください」