Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】

「……人から貰う愛は、偽りだと信じていた。
 過去にたった一人、私が思いを寄せた女でさえ、真の愛はなかったのに……
 凛花とは、思いが深まる前に、別れようと思っていた……」

 残月は、凛花をしっかり抱きしめた。
 きっと、もう放さないだろう。

 ……やっぱり、残月だって、凛花の事が好きだったんじゃないか。

 僕は、一人、そっとため息をついた。

……悔しいけれど、これで良かったのだと。

 しかし。

 ひとしきり、凛花を抱きしめた残月が、顔をあげた。

「凛花の本当の思いを。
 魅了ではない真の心に、もう少しだけ早く気付いてやれれば良かった。
 今の私には、やらなくてはいけない事がある。
 護るべきものが……他にあるのだ」

 残月は、そっと凛花を放すと、僕を見た。