Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】

 


 こんな夜の最中に、太陽の匂いが強くしたのだ。


 なぜ?



 嫌な予感がする。

 早く、残月を探そうと、焦り始めたとき。

 向こうの方から、僕達を見つけてくれた。

「皇子!」

 呼ぶ声に、見上げれば。

 月の沈みかけた夜空を、残月が不可視をまとって滑空してくるのが見えた。

「残月!」

「皇子……!
 なぜ、こんな所に!
 これ以上無理をしたら、本当に灰になりますよ!
 それに、ここは、危険だ」

「身体を、思いきり、動かしたい気分でね……花を届けに来たんだ」

「……花?」

 残月が、怪訝な顔をしていると。

 僕の後ろから、凛花が、飛び出した。

「残月!」

「……凛花」

 一気に、気が抜けたのか。

 涙を流しながら、凛花は残月の元に走る。

 一直線に、飛ぶように走る凛花を残月は、ふわりと受け止めた。

 その表情は、戸惑ってはいるものの穏やかで。

 凛花への愛情が見て取れた。