Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】

 凛花をまっすぐ見ると、彼女は、小さく悲鳴を上げた。

 翼を出した時に、顔も変わったのに気がついたのだ。

 本性により近く。

 人とは違う瞳に、裂けた口。

「吸血鬼、だよ」

「吸血鬼って、あの……?
 小説やなんかに出てくる、血を吸うやつ?」

「そう。
 残月は、教えてくれなかったの?」

「うん……残月は、何も、教えてくれないもの。
 血も、欲しいって言ったことないし……人ではない事も知ってるし……変身した姿も見たけれど……何も」

 でも、名前は教えてもらったよね。

 一番大切な事は。

 凛花にちゃんと教えているんだ。

 僕達は、人間ではない。

 それでも、凛花にはきっと、どうでも良いことで。

「それでも、凛花は行くんだね」

「うん!」

 凛花の強い意思が眩しい。

 僕には、もう、何も言える事はない。

 僕は、頭をまっすぐに上げると、騒ぎの中心に向かって、飛んだ。