「……ここは、どこだ」

 残月の家の「吸血鬼の輪」から外へ出ると、高い場所に出た。

 吹きすさぶ風が、強く、冷たい。

 夜明けまで、今少し。

 長い夜は、まだ明けず、辺りを見回せば、僕たちはデパートの屋上の更に上にいた。

 四角く囲われた大きな看板のてっぺんが「輪」の出口だったのだ。

 入るときは、意識を失って知らなかったが。

 遠くを見れば、夜風は冷たく、低い山を一つ越えた向こうの空が、時々閃光を放って見えた。

 ……その真下が、学園のある場所か。

 普段なら、一日のうちで一番静寂に包まれているはずの時間帯だった。

 なのに。

 耳を澄ますと、救急車やパトカーが街を走るサイレンの音が聞こえる。

 消防車の音も、何もかも、音を出して走る車はこぞって東星学園に向かって走っているようだった。

「行かなくちゃ!」

 凛花が、泣きそうに叫んだ。

「……でも……降りられない……よね?」