……そう。

 人の気配はない。

 なのに。

「こんばんは、皇子様。
 ようやくお目覚めですね?」

 機嫌のいい声は、相変わらず続き、僕は頭痛を思い出す。

 僕は、スタンドの明かりを探ってつけると小さくため息をついた。

「……千里(せんり)。
 皇子だなんて呼ぶのはやめろ。
 お前は僕の名前を知っているはずだろう?
 呼び捨てていいと言っている」

「やっぱり、今日は、お加減とご機嫌がお悪いようですね?」

 声が、小さく笑う。

「また、いつぞやのように面倒くさいからと、手順を踏まずに食事をとってしまったのではないですか?
 ……高貴な身の上のはずなのに……はしたない」

「高貴も何も、僕のほかに仲間が誰もいなければ「皇子」なんて呼ばれても、ただの道化だよ。
 ……それに、僕にだって、感情がある」

 僕は声の方を振り返った。

「千里……少し言いすぎだ」