小説や、子供向けの話に出てくるような『悪の組織』ではなかったな、と残月は月を眺めて言った。

「基本的には善良と、言ってもいい。
 戦争で疲弊した人々を救うためならば、と、時には法律を越えることもあったが……
 人の病を治すことに、情熱をかけている者達だった。
 ……そんな輩が私と接触してきた」

 残月は、話す。

 血と、体組織のサンプルと。

 問診、という形の自分の身体の説明と。

 それだけで、特に拘束されることも無く。

 驚かれる事はあっても、差別も無く。

 手に手をとって、お互いの利益のために進んでゆく、そんな集団だったらしい。

 彼らは、吸血鬼を人間の亜種としてではなく、病気の一種と捉えていたのかもしれなかった。

 それでも、執拗な追っ手を退けてくれた。

 居場所を確保してくれてくれた。

 人間に近い食事が摂れるようにまでにもしてもらった。

 おかげで、愛した人間と、少しは長く暮らして行くことができた。

 吸血鬼の情報の代償に。