「あなたは、吸血鬼の女や、子供や……人間の女を抱けない者達が、どうやって、命を繋ぐのか、知らないのか?」

「……な…に…」

「吸血鬼の血液に、嘔吐を促す物質は入っていない。
 あの女を抱けない、と言うなら。
 血が飲めない、と言うのならば………これを」

 残月は、軽く血止めをして、血液を満たした器を僕に差し出した。

「これを女子供の飲み物だと、拒否する事はゆるさない」

 喉の渇きは、耐え難く、拒むことなどは出来なかった。

 僕は、残月から引ったくるように器を取り上げると、貪り飲んだ。

 血に味は無かった。

 味わう余裕さえ、無かったのだ。

 器の血液を数口で飲み干し、まだ無いかと目が探す。

 そんな僕に、残月は黙って、今度は、自分の左手首を差し出した。

 僕はその手首に飛びついて、千切らんばかりに噛みついた。

「………」

 この時も残月は、痛みに微かに眉を寄せただけだった。