「……皇子?」

 声が、あまりに心配そうだったので、起きる事にした。

 本当は、眠っていたかったけれど、また、高い声が耳元で騒がれるとたまったものではない。

 僕は、重い目蓋を無理やり開ける。

 暗い。

 ……部屋は、目蓋が開いていても、閉まっていても変わらないほど暗かった。

 窓のない部屋だった。

 別に、地下室、と言うわけではなかったが、太陽光は身体に悪いので寝室には窓を作らなかったのだ。

 窓ばかりでなく、余計な家具も置いてない。

 今僕が寝ていたベッドと、着替えの入っているクロゼット。

 それにやや大きめの鏡と、ライトスタンドぐらいだ。

 あとはだいぶ広い石造りの部屋に、人の気配さえない。

 それだけだととても殺風景なので、最近見つけた絵画を一つかけたぐらいか。