Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】

 一瞬の出来事だった。

 ほんの一瞬、僕が、凛花の前で本性をさらすのをためらっているうちに、化け物は、そのまま凛花を連れ去った。




 きゃああああぁぁ




 悲鳴が尾を引いて消えてゆく。




「りんかあぁぁっ!!!」



 叫び声に、別の二匹の化け物が気がついて、僕でさえも絡め取ろうと、手を伸ばす。

 僕は素早く繰り出される手を逆に掴むと、次々に、用務員室の床に、叩き付けた。

 奴らは、微かに呻くと、動かなくなる。

 弱い。

 しかし、人間にとっては、わからない。


 僕は、カーテンを被ったまま窓を飛び越えると、凛花と化け物の後を追った。