Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】

 
 バン! バン! バン!



 大きな音が連発して近づいて来たか、と思うと、出し抜けに、用務員室の窓ガラスが割られた。

 細かなガラスの破片が、月光を浴びて、きらきらと降り注ぐ。

 僕は、カーテンを被っていたために、新たな傷は出来なかった。

 しかし。

「あっ!」

 凛花!

 小さな叫び声に、布の隙間から覗いて見れば、凛花の手に、一筋の赤い筋が出来ていた。

「凛……」

「きゃあああああ!」

 凛花が、目を大きく見開いて、叫んだ。

 !

 いや。僕ではない。

 凛花の視線は、僕を通り越して上に。

 窓ガラスを割ったモノの上に注がれていた。


 土山の化け物だ!

 そう、思ったその瞬間。

 化け物は、信じられない程の長い腕を窓から伸ばしたかと思うと、呆然と立っている凛花を捕まえた。