Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】

 
 喉が渇いていた。

 一瞬でも、自らの死を感じたほど傷ついた。

 身体を癒やすのに、どうしようもなく、血が欲しかった。


 ……喉が渇いていた。



 暖かい血液は、すぐそばにあった。

 抱きしめて、引き裂いて、飲み干せばこの上なく美味い美酒になるに違いなかった。

 暴れる女の抵抗を封じる力くらいは、まだ、残っている。




「……頼むから、来ないでくれ」



 今までであったなら。

 躊躇なく、血を啜っていただろう。

 しかし。

 僕は、凛花を傷つけたくなかった。

 苦しむ姿なんて、絶対見たくなかったのだ。

「で……でも」

 凛花は、近づいて来る。

 ……僕の事を心配して。

「来るな!」


 僕の声に、ようやく凛花は、伸ばした手を引っ込めた。




 その時。

 用務員室の外が、急に騒がしくなった。

 学校に詰めている人々が、悲鳴をあげたのだ。

 皆、一斉に。