2、30分もあれば、女を抱いて、血を吸う事が出来る。

 扉を壊しただけの、軽い監禁は、凛花を足止めする為の、行為の途中に人が入って来ないようにする為の処置だったのだ。

 松嶋が、敵なのか、味方なのか判らない。

 僕を殺したいのか、生かしたいのかも判らない。

 しかし、奴が吸血鬼である以上、この状態は、そうとしか考えられなかった。


 無理やり抱かれる事は、女性にとって、最も屈辱的な事だろう。

 しかも、吸血鬼に抱かれる、という事は。

 ぼろぼろになって、寿命を縮めると言う事でもあった。




 そして。

 確かに僕は、血に飢え、焼けつくような渇きを覚えていた。



 怒りが。

 自分が「何」であったのか、現実を突きつけられたような、悲しみと怒りが「僕」の姿を変えかける。

 さらに。

 雲った空の切れ目から、今夜初めて差した月光が追い討ちをかけた。

 身体の傷を直す代償に、僕の正体をあばこうとするかのように、輝いたのだ。