「……先生!」

 優しい声に、僕は、もうろうとした頭を振った。




「……凛花」




 僕が呟くと、彼女は、ようやくほっとしたように微笑んだ。

 学校は、大量発生した土山の化け物の為に、てんやわんやになっていた。

 夕闇と共に現れた化け物たちが、校庭をさまよい出し、人間に被害が出たのだ。

 最初に喰われた、刑事の他にも。

 僕は、時々意識を失いながら、松嶋に引きずられるように校舎に戻り、用務員室に放り込まれた。

 職員室と保健室には、怪我人があふれて、僕が休める場所もない。

 廊下や教室では警察と、救急隊と、テレビ局がひしめき合って、周囲には怒号が飛び交っていた。

 松嶋は、ここまで僕を連れて来ると、自分は、ふい、とどこかに消えた。

 後に残った凛花が、一続きになっている職員用ロッカー室から、カーテンをはがして僕をくるんでくれたのだ。