だん、だん、だん!
  だん、だん、だん!



 体育倉庫に飛び込んで扉を閉めると、今度はすぐ扉を叩く音がした。

 土山の化け物が、外に出られるようになったのだ。

 太陽が沈みかけ、あるいは、一雨きそうな雲に覆われて、陽の光が激減したために。

 僕は、赤髪がガラスを割っていった窓を、マットで塞ぐと、その場でへたり込むように倒れた。

 横になると、体育倉庫のコンクリートの床が、あっという間に血液で赤く染まる。

 緊張の糸が切れたとたん、身体もこわばり、指一本動かす事が出来なくなった。

 赤髪から受けたダメージが、思ったより大きかったのだ。


 冷たい床が、異様に気持ちいい。


 耳を澄まさなくても、人間達のどよめきが聞こえてきた。

 土山の化け物を目の当たりにしたらしい。

 やがて、人間達のどよめきは、怒号や、悲鳴に変わる。

 化け物の興味が、僕から人間達に移ったようだった。

 きっと、彼らは、戦っているに違いない。

 壮絶に。

 けれども、僕にはもう、どうする事も出来なかった。

 爪や翼を引っ込めて人に戻る余裕も無く、ただ、熱に浮かされた身体をもてあましていた。