……血の色だけは……人と変わらないのに。

 割れたガラスの破片で切った手の甲からは、女から吸い取ったものと同じ色の液体が少し流れて、絨毯を汚す。

 ……痛い。

 手が。

 心が。

 痛い。

 そのまま、膝をつきそうになる僕に、窓からの風が静かに吹いた。

 風は少し長い僕の髪と、半分開いたカーテンを揺らし、月の光を運んできた。

 青い満月が、僕を呼ぶ。

 重い足を引きずるようにバルコニーへ出ると。

 月光が、僕の本来の姿を暴いた。