がっ!


 だっだだ だだんっ!



 派手に崩れた跳び箱の下からは、何も出て来なかった。

 当たり前の床が。

 コンクリートの打ちっぱなしになっている、傷さえないただの床が、冷え冷えとしていただけだった。




 なに……?

 僕が、読み違えた?

 そんなはずはない……!




 しかし。

 倉庫の床には、この跳び箱以外、あのデカい赤髪の男がくぐり抜けられそうな輪は落書きにいたるまで……ない。

 ここは、赤髪のねぐらか、ねぐらへと通じる穴がある場所ではないのか?

 だとしたら、なんで、土山の化け物は、ここに入って来ないんだ?


『……千里?』

『中に、気配はありません。
 外の奴の食欲は、まだ衰えてないようで、入り口に張りついてます』


 化け物が、諦めた様子もないようだ。