「見張りは、出入り口だけで、裏の窓まではいなかっただろう?
 もしかすると、奴が窓から出入りしているかもしれない。
 それに……」

 僕は、鍵の閉まった出入り口を親指で指した。

「あの化け物が、ここに入って来ないのは、やつにとって、事を構えると面倒くさい相手がいる可能性が高い」

 僕は、びゅんと金属バットを一振りすると肩に担いだ。

 ……それに。

 赤髪が、どれだけ吸血鬼の技を使えるか判らない。

 しかし、人間が探せない場所に、ねぐらの入り口を作る事は比較的簡単に出来るはずだった。

 線でも穴でもいい。

 端と端がくっついて、輪になった空間を人間の意識から外させる事が出来るのだ。

 だから、探しどころは、あの赤髪の男がくぐり抜けられる大きさの、輪になっている場所。

 人間が、吸血鬼の牙の跡を探せないのも、同じ原理で……。



 ……そこか?


 僕が目をつけたのは跳び箱だった。