「俺さ、考えたんだよな。」
草原に座り込んで、何かを話す訳じゃなくただじっと風の音を聞いていたら隣から優しい声が聞こえた。
「何を?」
「もしも、俺が病気じゃなかったら。って…」
涼太が病気じゃなかったら…。
こんなに嬉しい事はきっとない。
涼太が辛いとか苦しいなんて考えなくても済むんだから。
「俺が病気じゃなくて、でもシズが居ない世界。
今みたいに病気だけど、シズが俺の隣に居る世界。
選べたらって考えた。」
――…涼太にとってどっちが幸せかな…。
私がいなくて病気じゃない。
その方が幸せに決まってる。
「俺はさ…病気であってもなくても、シズがいない世界なんて想像もできねぇんだよな。
だから俺は、今を選ぶ。」
「……今…?」
「そ、今。病気だけどシズが俺の隣にいる世界。
病気だけど、たぶん…いや絶対に俺は死ぬだろうけど…、
静音がいる世界ならそんなんもアリだと思うから。」
涼太は今をきちんと理解して受け入れていた。
先生が治療を休むって言った意味もすべてを理解している。
強い、ただ強がってるだけかもしれないけど…、
それでも涼太は強いと思った。

