あんまり歌うのが得意じゃない私はいつも聞き手に回るんだけど、今日は涼太に強制的に歌わされていた。
「上手いじゃん!歌わないの勿体ないって、なぁ…シゲ?」
「うんうん。シズちゃん上手い!リョウより上手い!」
「……てめっ、」
私の横でじゃれる二人を笑ってしまった。
仲が良い兄弟みたいな二人。
そんな二人が少しだけ羨ましい。
「初めましてーリョウの彼女さんですよね?」
「……えと……、」
「愛って言います。内宮愛。よろしくです!」
正面に座っていた美人さん。内宮さんに話し掛けられてどう返せば良いかわからなくて戸惑っていたら可愛い笑顔で頭をぺこりと下げられた。
「あ…安藤静音です。愛さん…で良い?」
「もちろんですよー。シズさんって呼んで良いですか?」
可愛い…。
どちらかと言うと美人系統な顔立ちなのにすごく可愛らしい。
気さくで人懐っこい愛さんは誰とでも仲良くしちゃうタイプっぽいな…
「リョウがね、シズさんをすっごい自慢するから会ってみたかったんです!」
「………涼太が?」
誰か私が知らない涼太の友達がロックを熱唱してる中で、愛さんの声はやけにクリアに聞こえた。
「はい!シズさんってものすごく愛されてますよ?」
「……うそー…」
「本当ですよ?だってリョウ今までは彼女できても絶対連れて歩かなかったんですから。」
愛さんの声が、言葉が恥ずかしかった。
嫌な気分の恥ずかしいとかじゃなくて、嬉しくて恥ずかしい。
自覚なんてない私の涼太の彼女としての自覚を付けさせてくれるような言葉。
すごく、嬉しかった。

