河内先生を見る事なく、枕元にあった雑誌を見ている。
―――…そっか…涼太は…
「…此処、行きたいんだ。シズと一緒に。」
「向日葵畑に?」
「あぁ。此処は俺とシズの始まりの場所みたいなもんだから。」
涼太、覚えてたんだ。
あの場所が私たちにとっての始まりみたいな場所だって。
出会った場所は違うし、告白された場所でもないけど…。
それでも私たちにとって、向日葵畑は始まりの場所なんだ。
「………明日、一日様子を見て何もなかったら許可するよ。」
「マジ?ほんとか!?」
「本当だよ、ただし……時間は制限させてもらうけどね。」
―――…わかってしまった。河内先生が何を考えているか。
「サンキュー!センセー。」
「患者さんの願いを叶えるのも医者の仕事だよ。
じゃあまた夕方に見にくるからね。」
嬉しいのに…嬉しいはずなのに…
先生の考えてる事がわかったら全然喜べなかった。
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「河内先生っ!」
笑顔を残して病室を出て行った河内先生を慌てておいかけた。
たぶん…違う、絶対に私の勘は外れてはいない。
だけど、外れてほしかった。
「河内先生…涼太、もう」
「シズちゃん。」
出かかった言葉は先生の言葉に遮られた。
先生の表情はいつも以上に優しくてそれだけで鼻の奥がツンと痛くなった。

