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闘いの始まりの日、皮肉な程に晴れた空。


それは同時に未来を連想させてくれているような気がした。





「――…涼太!」

「おー…シズ。おかえり。」


学校の帰りに涼太に会いに行けば必ず、"おかえり。"って迎えてくれる。
それが堪らなく嬉しかった。



「………大丈夫?」

「おう、大丈夫!シズは今日なんかあった?」

「特に……あっ、英語の抜き打ちがあった…、最悪だよー…。」


他愛もないその日の話しを当たり前に話す。

こんな日々が当たり前に続いてくれればいい。



涼太の右手首に刺さる点滴の針、そこから伸びる管は点滴台にぶら下がった袋につながっている。



「シズ?どうした?」

「…………痛くない…?」


私の視線は涼太の右手。
刺しっぱなしの針の周りは内出血したみたいに赤黒くなっていたから。



「痛くねぇよ、心配すんな?」


左手で頭を撫でられても今は安心なんてできなかった。



「今日さ…改めて医者に言われたんだよなー。」


私の頭を撫でながら苦笑いをする涼太に私は何も言えない。

――…何を言われたの…?

ただそれだけ、涼太の声が鼓膜に響いている。



「いや、さ…今までどっか調子悪くなかったのかって。

全然なんもなかったからさ……どんだけ鈍いんだって話しだな。」


末期まで進んだ病気も涼太は何も気づかなかったと言う。

でも、嘘だよね?

たまにちょっと顔色悪かったりとか、たまにふらついたりとかしてたよね…?


それを聞いてもいつも笑ってはぐらかしてたもんね。




――――…もしかしたら…、


ずっと前から涼太は自分の変化に気付いてたんじゃないかって考えてしまった。