病室を出て1時間経っても私は病室の前を離れなかった。
涼太が今、何をしてるかわかってるから。
近くにいたかった。
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静かで真っ白な病室。
そっと開けたドアに気づかないでドアに背中を向けて窓の外を見ている涼太。
「――…意地っ張り。」
消えないで…。
白に溶けてしまいそうな貴方を力いっぱい抱きしめた。
「どうして隠すの?私…涼太の支えになれない…?」
「シズ………静音っ…」
涼太が私を静音と呼ぶのは本当に辛かったり悲しかったりするときだけ。
覗いた涼太の目は赤くて、ほっぺたに涙の跡が付いていた。
どんなに強がったって…
どんなに笑っていたって…、
辛いのは涼太なんだ。
痛いのも辛いのも。
「涼太…、言って?ちゃんと聞くから。」
聞かせてほしいの。
涼太が何を考えて何を今思ってるのか、ちゃんと聞きたい。
受け止められるから。
涼太の全部を私が受け止めるから。
「―――――……た……んだ」
「ん…。」
「死にたくねぇんだっ…!」
涙が零れた。
涼太の声が、言葉が、痛い。
「生きたい…生きて静音と一緒にいてぇんだ…っ、来年も再来年もずっと一緒にいてぇよ…」
「……生きよう?来年も再来年も。生きて一緒に色んな事しよ?
生きて……私と結婚しよ?」
今の涼太に"生きて"なんて無責任なのかもしれない。
だけど…私にはそれしか言えなかった。
普通なら生きる事や明日がある事は当たり前なのかもしれない。
でも…、
涼太には当たり前じゃなくなったんだ。

