やがて、私にも温かい日常が帰って来たようで、もう一度、学校に通うことになり、家庭内にもまた前のようなゆとりが戻って来た。




玄関で靴につま先を入れ、ドアの前で振り返った。

微笑む母が立っている。


「行ってきます」

「行ってらっしゃい」





母はその後忙しそうにリビングに戻ってきて、「ヨル、二階に洗濯物、干してくれる?」と言った後に、カウンターの上に放置された水差しを見つけ、


「アサったら。学校に行く前に花に水あげてって言ったのに」


とこぼした。


「私がやりますよ」

「ありがとう、いつも助かるわ」





久しぶりの制服は何だか気分的にくすぐったくて、でもワクワクした。

朝の光をいっぱいに浴びてうんと背伸びをすると、なんだか入学したての気分だ。