待ちくたびれそうになった一時間後。どんどん人が入ってくる。
どの人もみんなおばさん世代からおばあちゃん世代の人たちばかり。

その中に一人だけ金髪の恐そうな眉の細い二十代後半の女の人が目立っていた。


「今日から?」


「はい、お願いします」


着替えてきたその女性に声をかけられ、立ち上がって頭を深く下げた。


「来て」


でも、そんな私の挨拶など関係なしに店の奥にあるトイレの前まで連れてこられた。



「朝は掃除。ホールでしょ?ホールだよね。トイレ掃除して、終わったらホールをこのほうきで全部掃いて。それが終わったら床、全部モップ掛け。わからないことがあったら聞いて」



早口で淡々と説明して行く女性の背を見ながら私は口を開けたまま佇んでいた。



とにかくトイレ掃除をすればいいのかと十畳近くある広い女子トイレと男子トイレの掃除を始めた。


20分かけてやっと終わり、ホールを掃いていると目の前にまたその女性が。しかも、なんだか怖い顔つきで。


「来て」


そのまま黙って着いて行くとまたトイレの前だった。