実話〜頭文字(initial)─K─




このまま引っ込んでしまっては、社長の威厳は丸つぶれです。


「鳩なんてどうだって良いだろう!仕事をやりたまえ!仕事を!」


社長はKさんに向かって、そう怒鳴りつけました。


しかし、相手はKさんです。


それぐらいで引き下がる訳がありません。



「いや、これだって仕事だから!」


軍手の玉を両手いっぱいに抱えたまま、Kさんは堂々たる態度でそう言い放ったのです。


「何!」


「鳩には嘴(くちばし)だってあるし、爪だってある!大事な新車に傷でも付けられたら、たまらね~からなっ!」


「うぬっ……」


意外と説得力のあるKさんの理屈に、思わずたじろいでしまう社長。



「だいたい、鳩が飛び回ってる下で仕事なんかしててみろ!そのうち………………………」


そこまで言いかけたKさんは、次の言葉を飲み込んでしまいました。


なぜなら……


Kさんがこれから言おうとしていた事……



それは、今まさに現実の出来事として起こってしまったからです。