東北沢の、いつものホームに降り立つと、もうすぐ夏だってのになんだか肌寒いような気がしていた。

ああそういえば、酒も飲まずにここにきたの、久しぶりかも?



改札を通り抜け、駅前にある古ぼけた喫茶店に入る。

そこはリンダに会うときにいつも指定される店。
早めに会う時には、ここで食事をしてから、リンダの部屋まで行っていた。


リンダとは、月に一度ぐらい、こうやって俺が連絡すると快く会ってくれる。

いつも俺から。向こうから連絡がくるなんてことは無い。

でも、断られることも、ほとんどなかった。



店の扉を開くと、カランコロンと懐かしいようなドアベルの音がして、いらっしゃいとお店の名物ママが笑顔で迎えてくれる。


小さくてごちゃごちゃ色んなものがおいてあって、スナックみたいなトコだけど、居心地がよくて好きなんだ。

近所のバンドの兄さんたちも、ここの常連って人が多い。



リンダは一人で、一番隅のボックス席で焼きうどんを食べながら瓶ビールを飲んでいた。


「早かったね?なに食べる??」


席につくなりすぐにグラスが一つ用意されて、リンダがすぐにビールをついでくれた。



「じゃあ、焼ソバ。」


それだけオーダーすると、ママは笑顔でキッチンに引っ込んでいく。



お店の中には珍しく俺たちしか客はいなくて、うるさくない程度に昔のロックが流れているだけだった。





「なんかあったの?」

黙々と焼きうどんを食べながら、リンダはにっこり微笑んで話し掛けてくれた。



「べつに、何となく暇だったから・・・」




友達と恋バナしてたら、恋しくなったなんて、恥ずかしくていえねーもん。

ついでもらったビールを一気に胃袋に流し込んで、顔が赤くなってるのを酒のせいだとごまかそうとした。



「ふーん、そっか・・・」

いつものように興味なさげに返事をして、勝手にビールのおかわりを冷蔵庫から出してまたついでくれた。