「蓮、きてるならきてるって教えてよ・・・」

カオリさんは、早速アキラが居るのに緊張し始めてまたそんなことを言っている。

「いいじゃん別に、今日ずっと一緒にいたんだし、ビトがモモに話があるんだってさ。2人で会うよりいいでしょ。」


モモも、ビトがいるのが気まずいのか、ずっとカオリさんの横にぴったりっくっついたまま、エイジのそばにも行こうともしなかった。


ビトがこっちにきてさりげなくモモの隣に座るから、僕はカオリさんを引っ張ってちょっと離れたテーブルのところに移動させる。



「ねえ大丈夫なの?」

カオリさんがさっきのこともあって心配してるけど、大丈夫だよってなだめた。
ほっておくと、またなんか言いそうだもんな・・・




ちょうどいい感じにルームサービスも来たので、ビトとモモをそっとしておいて、僕たち残った四人は先にピザを食べることにした。


「あ、ビール持ってきたんだけど、エイジ君飲む?」


カオリさんがちゃっかり隠し持っていたビールをエイジに渡すと、調子よくやつもまた飲み始めてしまった。


「アキラ君は呑んじゃまずいでしょ?レンはビール飲まないし。」

ちゅーかさっき呑んだけどな、まああんまり好きではないのは確かだけど。


「あ、そういえばレン、サマソニのHP見た?俺たちトップででかでかと載ってたぜ。」

ああ、昼間撮られた写真の事か、もうアップされてんだね。

まだ見てないやって言うと、アキラがスマホでそのページを見せてくれたので、みんなでそれを見た。


「やばーい、なにこれ2人ともいけてる!!」


カオリさん興奮して、自分のスマホでも見ると色々検索し始めた。


「なんか、ツイッターとかでも話題になってるっぽいよ。」

連動したSNSもチェックすると、アキラがトップに出ているってことはもちろん、何故か僕のことも話題になっていてびっくりする。


「”アキラの隣のイケメンな少年は誰?気になる!”だってさw」


カオリさんがいちいち読むのが恥ずかしい。


「あ、まとめサイトまで出来てる・・・お前ばらされてるぞ、二宮さんの息子だって。」


「えーマジかよ、めんどくせぇ。」

アキラにいわれてそのサイトを見ると、ちゃっかり今年の東東京大会の試合の写真とかも引用されていて、高校名までばらされていた。

僕一応一般人なんだけどなあ・・・


「レンも有名人だかんな、学校でも人気あるし。」

エイジが余計なこと言うから、カオリさんまで「え?そうなの、初耳だけど。」なんてキョドっている。

「毎週誰かにコクられてたもんな、お前。」

なんでそういうこと言うかなぁ…

「別に全部断ってんだから、かんけーねじゃん!」

ちょっとムカつきながらエイジを睨んでやると、ヤツはいつもみたいに面白そうに笑っている。


「お前だって、モモに余計なこと色々ばらしてるだろ?」


そう突っ込まれると、ぐうの音もでないけど…


「昔の事なんて知らなくていいんだよ。言うタイミングが来たらちゃんと言うし。」


そんなことを話していると、カオリさんが何か思い出したようで、いいずらそうに話し出す。


「あのさ、エイジ君にお願いがあったんだけどさ…」


「なんだよ急に…」

いつもはなんでも楽しそうに話すカオリさんが、やけに深刻な表情で居るから不安になる。



「リンダちゃんに会ってくれないかな? 約束したんだ、私がエイジ君つれてくるって。
ちゃんと話して、ちゃんと別れてあげて…」

その事は僕もなんだか知らないことで、エイジも複雑な表情をしながら、モモの方を見つめていた。