新井薬師から中野まで、すぐなはずなんだけど、カオリさんが酔っぱらってるのかいつもよりゆっくり歩くもんで、なかなかたどり着けずにいた。

ヤバイなぁ、もうすぐ終電だよって気にしてるんだけど、カオリさんはそんなことまるでわかってなくてはしゃいでいる。


「リンダちゃん、可愛いなぁ、今度一緒にライヴいくんだ!」

すっかり仲良くなってるみたいでなんか複雑だ…

まさか、今度一緒にいく野音のイベントとかに誘ったりしてないよねって不安になる。
だって、エイジ誘っちゃったもん…


「カオリさん飲みすぎなんじゃないの?」

ちょっと心配して言うと

「えー、ビールと焼酎二杯づつしか飲んでないよ!」

って威張ってる…  充分飲んでると思うけど…


「ちょっと急ごうよ?帰れなくなっちゃう…」


そういったら、何でって普通に言われるので、こっちこそ何でって思っちゃう。

「うちに泊まってけばいいじゃーん!」

声が大きいよ…



それでのんきに歩いてたんだなって今さら思う。

どうしようかなあ… 酔っぱらって寝てるカオリさんとこに泊まるなんて、ちょっと拷問かもしれない。



「ちゃんと送ったら帰るよ。」

そういったら、繋いでた手をぎゅっと握られて、その場に立ち尽くすので、僕も立ち止まった。


「どうしたの?」

彼女の顔をのぞきこむと、いきなり口づけをされた。


え?

これはこの前と逆だなってちょっと思って戸惑う。



「レンは彼氏じゃなかったの?」



そんな風に艶っぽい顔で急に言われると、何も言い返せなかった。


「寂しいから、今日は泊まってってよ…」


今度はうつむいて聞こえないくらいの声で言うから、断れないじゃないか…





カオリさんのアパートの近くのコンビニで飲み物とかを買って、いそいそと部屋に通される。
二回目だったけど、今日はアキラのポスターも内輪もなくて安心した。

心なしか、この前よりきれいに片付いてる感じ。


すぐに冷房をつけてくれて、この前のように着替えも出してくれる。


「あ、お風呂すぐはいる?」

そう聞かれるから、じゃあ入ろうかなって答えながら、さっき買ったばかりのよく冷えたポカリを飲んだ。