新井薬師前の駅前のふるさとってオヤジ系居酒屋で、テツさんは雇われ店長をしてる。
カオリさんのうちからも割りと近かったから、中野から二人で歩いて向かった。


お店にはいると、カウンターの中にテツさんが居て、ずっとなにか焼き物をしながら、僕たちにいらっしゃいって声をかけてくれる。

「カウンターでいいか?」

そう言われて、二人でテツさんのそばに座ると、隣に見覚えのある女の人がいて…


「あ、久しぶりじゃん、エイジの友達だっけ?」

それはやっぱりリンダさんだった。


なんだか気まずいなあぁ…


「知り合い?」

カオリさんがそうきいてくるから、雷神のファンのリンダさんだよって教えてあげると、私もファンなんですよーってにこにこしながら二人で話始めてしまった。



「エイジ元気?」

すっかり意気投合して三人で飲んでいると、話の合間にポツリとリンダさんはそうきいてきた。



「元気ですよ。夏休みに入ってからはまだ会ってないけど。」


たぶんモモは毎日会ってんだろうなって、なんとなく思った。


「私も全然会ってないんだよね…やっぱ彼女できたのかな?」

とても悲しそうにそう言うから、なんていっていいか困った。


「エイジ君ってあれ?モモちゃんの彼氏の?」

カオリさんは何も知らないから、言いづらかった事をズバッと言ってしまう。


「やっぱそうかぁ…」
リンダさんはそう言ってうなだれていた。
やっぱりエイジの事好きだったんだろうなあってなんとなく思う。


テツさんが、おかわりのビールをカオリさんに持ってきてくれたので、テツさんもそれに気づいた。


「アイツもまともな彼女できたんだ、良かったなぁ。なあ?」

リンダさんに同意を求めるようにそういうと、彼女は悲しそうに笑った。



「リンダ、もうアイツには関わんなよ。」

テツさんが意味深なことを言う。
どういう事なんだろうな?


「別に、エイジが勝手にうちに来てただけだもん…」

「そう仕向けてたのはお前だろ?わざとやってんのわかるよ。
もうそういうの止めろな、アイツ可愛そうだろ。」

男は逃げると追いかけるもんなんだって、そんなことをテツさんは話していた。



なんか大人の話っぽいなぁ…


「何?リンダちゃんってエイジ君の元カノなの?」

カオリさんはまだエイジには会った事無いけど、僕がよく話してたから知ってるんだ。
テツさんの息子だってことも。

相変わらず、言いづらいことを言ってくれるよなぁ… まあ僕も人の事は言えないけど。


「違うよ」

小さな声でリンダさんは答えた。


「ちょっとまって、全然話が見えないんだけど!」

カオリさんは酔ってきたのか、声が大きくなっている。
僕はずっとウーロン茶しか飲んでないから、二人に挟まれてめっちゃ気まずい…


助けてってテツさんに目で訴えたんだけど、笑いながらカオリさんの前に注文したエイヒレを出すだけだった。