店に入ってから、ドリンクバーで適当にジュースを取ってくると、すぐにビトは数曲入れてもう歌う気満々って感じだった。

僕もタッチパネルを見ながら、何曲か入れたけど、まずはビトがお父さん達の持ち歌を歌いだす。


”たぶんあの時僕らは歩き出したんだ互いに~”


いつもはちゃんと発声して歌うビトが、なんだかやけくそのように叫んで歌うので、ちょっと切ない。
この曲もなんだか因縁の曲だもんな・・・


とか思いながらも、僕も無意識にモンパチなんか入れちゃったので、ちょっとミスったかなとも思う。


”ほらあなたにとって大事な人ほどすぐそばに居るの~”

「って、どこにいるんだよ!」って、ビトはやけくそになっていった。


ハイスタのステイゴールドを2人で歌いきった後には、なんだか疲れてしまい、ちょっと休憩した。




「なんかごめんレン、付き合ってもらっちゃって。」

こんなことぐらいでビトがスッキリするなら、いくらでも付き合うよって僕は答える。

「ああ、やっぱ大声出すと良いね、うちだとちゃんと歌ってないと、ママにダメだしされるから、鼻歌も歌えないんだよな。」

そんな風におどけて笑う。


「そういえばこんなときあれだけど、僕彼女できたんだ。」


今言ってよかったかなってちょっと思ったけど、いつかは報告しなきゃならないしな・・・


「よかったじゃん!おめでとう。」

そんな風に普通に言ってくれるので、なんだか嬉しかった。



「ずっと好きだったお姉さんでしょ、何だっけ?カオリさんだっけ?」

ビトはちゃんと覚えていてくれたので、なんだか照れる。


つい嬉しくなってしまって、そういえばモモもさ・・・って言いそうになって、やばいって思ったけど、そこまでいうともうビトに気付かれてしまう。



「どうせ、モモちゃんもエイジと付き合ってんでしょ?」

でもホント最近だからねって、フォローにもなってないことを口走ってしまう。


「もうさわかってたよ、エイジにあった瞬間さ、もう取られるなって。
あんなモモちゃんの態度、初めて見たんだもん。」

僕は全然気付かなかったのに、ビトはやっぱりわかってたんだなあって思う、ちゃんとモモを見てくれてたんだなって思う。



「でもさ、びっくりしたんだよね。絶対モモは片思いで終わるんじゃないかって思ってたから。」

また余計なことをいってるような気がしたけど、僕は話し続けてしまった。