鏡村【短編】

鏡に手が触れた途端、天地がひっくり返ったかと思うと、そのまま鏡に吸い込まれるかのように消えてしまった。


玲は薄らぐ意識の中で、合わせ鏡に映り永遠と続く自分の姿を見た。


そして、そのまま意識が遠のいた。


鏡村の男とその息子である男の子は並んで鏡を見つめる。


「お父さん、お姉ちゃん逃げちゃった……」


ため息混じりにそういう息子に大男が呟く。


しかし、どんな言葉を話したのかは聞こえない。


丁度鳴った鐘の音と重なったのだ。


奇妙なこの村に、不気味な音が鳴り響く。


男の子には鐘によってかき消された言葉が聞こえたのか、父親に向かって口角をつり上げて見せた。















カチッ、そんな音と共に時計の針は一つに重なった。



.