君しかいらない

「あたしの涙腺って壊れてるかも。」

照れながら涙を拭った私の髪を優しく撫でる。


「あの家に一緒に帰るか?」


「あの家?」


「わかるだろ?

…お前の大切な思い出が詰まった家だよ。」


言葉の意味が理解できず、不思議そうにしてる私に知也は続けた。


「お前が生まれ育った家。」


「でも、あそこは…」


「今は俺の家。」


「えっ?」