家に帰った後も思い出すのは、あの男の人の事。 少し長めの手足。 整った顔立ちにちょっと厳つい目元。 眉はちょっと凛々しい。 後ろに流すようにセットされたちょっと長めの黒髪。 今でも鮮明に思い出す。 声を聞けなかったのが、残念で仕方がない。 声が聞きたい。 「本当は寝てたんじゃないだろうか。夢でも見てたんじゃないだろうか」 などと疑問が出てくるが、いくら思い返したところで答えが出る訳でもなく、私はそのまま眠りに就いた。 この時は、またあの人に会えるなんて思いもしなかった。