「こら!吉沢、またよそ見か」

その声と共にガツッと頭に衝撃が走る。
振り向くと、秋山先生の怒り顔。手には分厚い世界史の教科書。


「痛〜い。何するんですか。角で殴るなんて酷い」

「よそ見してるからだ。ちゃんと授業に集中しろ」

「ちゃんとしてますって、空の観察」

「たっく。今は世界史の授業だ。何回言ったら解る。次よそ見してたら、一週間居残り補習だからな」

「……は〜い」

とりあえず返事をし秋山先生のハゲ頭を見送ると、懲りない私はまた外に視線を動かす。



目に映るのは、誰もいないべンチ。
急いで探したけれど、その姿はもうなかった。

「あのハゲめ〜。目の保養だったのに。もっとハゲてしまえ〜」心の中でそっと怨んだ。