マンションに着くと見慣れた車が止まっていた。

「どうして?」

そう思ったのも束の間、私の願望が幻として見えてしまっているのかもしれない。


幻覚というやつか。

はたまた人違いだろう。


恥をかく前に車に駆け寄らなくて良かった、と心底思った。

大きく息を吐き出し気持ちを落ち着かせると、持っていた荷物を持ち直しエントランスへ向かった。



ロータリーに止められている白い車に近付いた時――――


「随分と遅かったな」

ついには幻聴まで聞こえ始めた。

泣き過ぎた所為で、頭がおかしくなったのかもしれない。