「諦めろ」 いつの間にやら開けられている私の作ったお弁当。 「美味そうじゃねぇか。食っていいか?」 私の返事も聞かず、卵焼きを摘むと口の中に放り込んでいた。 「甘めぇな」 「甘いの嫌いでした?」 「いや、甘めぇ方が好きだな。全部食ってい?」 その一言が嬉しい。 嫌なこと全て忘れられる位幸せな一時(ひととき)だった。 「それは良かった。…ってか、お弁当取ってるの知らなくて…ごめんなさい」 「謝らなくていい。丁度、この弁当にも飽きてたとこ」 仕出し弁当の蓋を閉め、机の隅にずらした。