後頭部に残る衝撃。 選手の足に引っ掛かったハードルが飛んで、私の頭に直撃したらしい。 「大丈夫?」 「大丈夫。はい、これ」 ミニハードルを取りに近付いて来た葉山の肩越しに、こちらを窺(うかが)う集団が見えた。 その中には、クスクス笑う女や私を睨み付ける女の姿もある。 「吉沢さん、ごめんね〜」 態(わざ)とらしい副部長の声が凄く耳障り。 「いいえ」 それだけを返す。 相手にしてはいけない。 今は放って置くのがいちばん。 気にしない素振りをして作業を続けた。