壁に凭(もた)れ掛かり、目を静かに閉じれば、彼女達の嘲笑(あざわら)う声だけが鮮明に聞こえてくる。


「あれ?シャーペン折ったのは誰?」

「それはアユ」

「アユ?今日、教室であいつ転ばせたっていう?」

「そうそう!そのシーン見たかった」

「今度やっちゃう?」

「いいね。やっちゃう?」

そして、また響く笑い声。



…コート。

…シャーペン。

…膝の傷。


これ全部、ワザとだったの?



カタカタと震える身体は、

冷たい風の所為?


先生から貰ったカイロを、もう一度握り締めた。