近付く程に、聞こえてくる声は大きくなる。 「あいつ、本当にムカつく!」 「本当!嫌がらせされてるのも分ってないのが、更にムカつく!」 「普通は誰だって気付くでしょ?」 「だよね。あれだけやればね」 誰の事か分からないが、悪口だと云う事は私でも分かった。 何となく足音を立てない様に、部屋に近付いて行く。 …でも本当は、その時点で気付いていたのかもしれない。 ただ知らない振りをしていただけのかもしれない。 ……何もかも。 そして、それを否定されるのをどこかで望んでいる。