コートが私から離れていった。 「早く着替えて帰れよ」 「はい」 「気ぃ付けてな」 「はい。さよなら」 「あぁ」 手を振った私に軽く右手を挙げ、応えてくれた先生の姿に顔がニヤけた。 そんな顔のまま部室へと向かう私は、相当浮かれている。 カイロを手に取ると、温かさが指先から全身に染み渡って行く気がする。 階段をいつもより軽やかに上がると、聞こえてくる話し声。 遅れて来た所為で、他の部室に人影は疎ら。 だからこそ、その声は鮮明に耳に留まる。 女達だけの声。 あの特有な声。 私の苦手な声。