「馬鹿力!」 涙の溜まった目で、思い切り睨みつける。 「またやっか?」 左腕でしっかりと肩を抱かれ、とてもじゃないが逃げられる感じがしない。 「とんでもない。すんませんでした」 「仕方ねぇな」 そう言った先生は、私の肩から手を離した。 「で、何か用があったんじゃねぇのか?」 「忘れるところだった。ありがとうございました」 着ていたベンチコートを脱ぎ、先生に差し出した。 その途端、冷たい風が身体に当たり、ぶるっと身体が震える。 「あぁ。また使いたかったらいつでも言え。貸してやる」