「うん。ちょっと待ってて」
そう言って受話器を置いた後、自分の姿を思い出して絶叫した。
上下スエット姿。
いくらなんでも、この姿では嫌だ。
でも時間もない。
唯一持ってるお出かけ着。
迷いなんてない。
迷いようもない。
グレーのニットワンピースと黒いコートを着込んで飛び出した。
エントランスを抜け辺りを見回すと、いつもの所に先生の車を見つけると駆け寄った。
それと同時に助手席のドアが開く。
ちょっとだけ躊躇(ためら)いながら、車に乗り込んだ。
「…遅ぇ」
ドアを閉めたと同時に聞こえてくる。
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