私は、顔を上げる事が出来なかった。 その声が、あまりにも冷たく感情がなかったから…… いきなり解放された手。 それと同時に、葉山から離れる。 冷や汗が背中を伝い、足が震える。 あの時、感じた気配は先生だったのかもしれない… 目の前を通り過ぎる後藤先生を感じて、ハッと顔を上げてみても、大きな背中しか見る事が出来なかった。 その瞬間、目に見える全ての物が色褪せていく。 出来る事なら、本当はその背中を追いかけて行きたかった。 しかし、目の前には葉山。 仕方なく、教室に戻るしかなかった。