「そんな事あったっけ?」

「あったんだよ」

「へぇ」

「泣いてる子の手を握って、慰めてたんだよ。その時に、初めて吉沢の笑ってる顔を見たんだよ。

それで、好きになったんだよな…」


懐かしむ様に目を閉じた。


「いつも笑ってるじゃん」

「違うんだよ。何て言うか…優しい顔してたんだ」

「優しい顔?」

「あぁ。でも、あれ以来見た事ねぇけどな」

「いつも優しいけどね」


された事は、まだ当分許せそうにない。

けれど…今こうして、いつものように話せるのは、葉山だからなのかもしれない。


「……悪かったな」

『何が?』なんて言われなくても分かる。

だから、一言だけ「うん…」と返した。