「あそこ電気点いてねぇから」 先生の仰ぎ見る視線の先。 マンションの一角。 私が今から帰る場所。 「ここから見えたんだね。知らなかった」 ドアから離れ、後部席からフロントガラス越しに先生の視線の先を見上げた。 「戸締まりはしっかりしろよ。それから、飯ちゃんと食えよ」 「はい。ありがとうございました」 「あぁ。また明日な」 ドアを開け外に出ると、冷たい空気にブルッと背中を震わせた。