「心臓がいくつあっても足りない…」

ぼそっと呟く。



「何か言ったか?」

「なっ、何も言ってない」

聞かれてなくて良かったと心底ほっとした。



「ほら、着いたぞ」

窓の外を見ると見慣れたマンションが。


「ありがとうございました」

先生の背中にペコリとお辞儀をし、ドアに手をかけると



「今日も親いねぇのか?」



その言葉に、勢いよく運転席へと振り返る。

すると、ハンドルに顎を乗せ、フロントガラスから空を仰ぎ見る先生の姿。


「……うん…何で?」

その姿に自然と声が小さくなる。